シュガーマン 奇跡に愛された男

サントラジャケより らもさん似
サントラジャケより らもさん似

この映画はアメリカデトロイトでひっそりとたった2枚のアルバムを作り表舞台から消えた「シュガーマン」ことロドリゲスという男の数奇な運命を追ったドキュメンタリーです。「シュガーマン」とは彼の曲のタイトルで麻薬の売人を意味します。(もちろんロドリゲスは麻薬の売人ではありませんよ)当時のデトロイトの荒んだ世界や世の中に対しての諦念を暗喩をこめた詞に描き美しいメロディにのせたロドリゲスの曲は素晴らしくプロや一部の好事家は認めるものの、アメリカではまったくヒットはしませんでした。そのためロドリゲスは音楽界から姿を消してしまい「ステージ上で焼身自殺した」などと物騒な噂までたってしまうのです。しかしなぜかアメリカとは遠く離れた南アフリカで曲だけが一人歩きし大ヒットしていて伝説の国民的な歌手になっていたのです。当時の南アフリカはひどいアパルトヘイト政策の真っただ中でロドリゲスの描く反体制的な歌の世界が南アフリカの若者達の心を動かしました。そこで彼の消息を探すひと達がネットを立ち上げロドリゲスの情報を求めたとろ、何と彼の実の娘から連絡が来てロドリゲスの現在の姿がやっと画面に現れます。彼は長い沈黙の間ずっと肉体労働に従事し生計を立て暮らしていました。南アフリカで自分の曲が大ヒットしていたなんて夢にも思わず日々淡々と。南アフリカで売れた分のものすごい額の印税は彼の元には渡らず元のレコード会社の社長が全て横取りしていたのです。(たぶん)

それでも彼はただ毎日まじめに働き普通の生活を続け愚痴などこぼしません。そして様々な人たちの尽力の結果ついに40年の時を経て南アフリカのファンとロドリゲスが奇跡の邂逅を果たします。南アフリカの満員のライブ会場でロドリゲスがステージに現れた瞬間、ものすごい歓声が彼を包みます。彼の歌声はまったく変わっていませんでした。この映画を見てロドリゲスの人間としての芯がまったくぶれない人柄、生き様にただ感動しました。ものすごい才能があるのに欲をかかず、大きな声をあげず、目の前の自分のやるべきことだけをやってきたというシンプルゆえに力強い彼の生き方が曲ににじみ出ているからこそ南アフリカの人々の心を打ったのでしょう。彼の楽曲はシュガーマン以外にも映画の中でたくさん流れます。本当に素晴らしい曲です。前回のアイウェイエイの映画の時もいいましたが、自分に正直に生きていればきっと誰かに届いているのです。日本人の某アーティストで芸術家起業論などと言ってる人がいますが真のアーティストとはお金を生む作品を作れる人のことではなく、たとえお金にならなくても人の心を動かし、少しでもその人にとって生きる力になる作品を生み出せる人のことをいうのだと思いました。この映画はDVDになっていますのですぐに観られますよ。